魔法の言葉

今から8年ほど前のことです。

秋も深まりお化粧品は秋色が並ぶ季節、私はラメ入のアイシャドウを買いました。そして寒さが増し長雨が続いたあとに6歳の娘は風邪を引いて食べた物を全部嘔吐するので休日当番医へ向かいました。小児科の待合室は沢山の子供と付き添いの親御さんでごった返していました。それから2時間ほど待って娘の嘔吐の症状も落ち着いた頃、私は前日からの娘の看病の疲れでウトウトと眠気に襲われました。娘を脇に支えながら待合室は木漏れ日が揺れていました。どこかの子供が行ったり来たりする気配を感じながら椅子にもたれてまどろんでいるとその気配がピタッと止まり『キレイ』と。スーと目を開けると3歳くらいの男の子が私の瞼に指差してまた、『キレイ』と。何気に近くの鏡で顔を見ると瞼にラメのアイシャドウ。家を出る際に指でそーと瞼になぞったアイシャドウが光にあたってキラキラ光っていました。

小さな子供の何気ない一言が魔法の言葉を振りかけたように思えた瞬間でした。

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